映画「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」

これも映画館でみたかったのだが、2008年もばたばたしていたからなあ。


みられてよかった。
前作に比べるとこちらのほうが見た後の後味がいい。


映画「ゲゲゲの鬼太郎」公式サイト

http://www.gegege.jp/


20年前までの伊東聰、元妖怪、心霊博士。
ところで、今年は心が涼しくなるような妖怪・おばけものやらないなあ。


不況の影響と、捏造問題やネットの発達によって「はやらなくなった」らしいのだよな。
こうやって妖怪は少しずつほろぼざれていく。


さて見終わって感想。



おなじみの高校生ぐらいの多感な青年鬼太郎。
最初のシーンは鬼太郎誕生。役柄上少し大きい子ども。
かわいいなあ…。


隻眼ではないのは放送コードかなにががあるのか、と前回書いたが、相当いろんな意見があったらしく、今回は「隻眼」を説明するシーン(義眼の手入れ)がはいる。(なんか義眼にしてはおおきずぎるような…)


今回のテーマは人間のあさはかさ。そして裏切り。


「人間と妖怪たちが平和に共存して生きていける社会」。
いつの時代でも妖怪たちはそれを望んでいた。
たとえば昔書いた「雪女」の話もそうだ。


「雪女」の検索結果 - さとしの哲学書簡ver3 エジプト・ヘルワン便り
http://d.hatena.ne.jp/stshi3edmsr/searchdiary?word=%C0%E3%BD%F7&type=detail


※巳之吉の子どもたちはどうなったのか?を参照


だが、それは人間のあさはかさで容易に破壊される。


この映画の物語もそんな伏線をもってスタートする。
人間の海人を愛した妖怪人魚。
そしてその願いはかない、幸せな日々。
だが、人間たちによって破壊される。


今回の個人的みどころは鬼太郎VS夜叉の日韓妖怪のバトルシーン。
ああ、髪の毛系の妖怪大好き…もちろん長髪男性支援の私としては…というのはおいておいて(苦笑)、夜叉って外来妖怪だったっけ?


調査。インドから中国経由でわたってきた妖怪らしい…。

夜叉 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9C%E5%8F%89


猫娘がかわいーーーー!とかいうのもおいておいて(苦笑)。
文車妖妃もかわいーーー!…ああ、ダメだ、自分。
図書館ネタだからというのもあるけれど、文車妖妃というかなりマイナーな妖怪を重要な役割にもってきたのもGood!


文車妖妃 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E8%BB%8A%E5%A6%96%E5%A6%83


文車 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E8%BB%8A


うーんうちも文車つくるか(笑)。
カメラマニアだった曽祖父の影響で、うちには明治・大正・昭和初期の満州の写真があるんだよ。
当時のものはめずらしいでしょう。
歴史研究家の私としては整理したいが、整理できていない…。


毎度おなじみのほのぼのシーンからはじまって、三浦半島で癒し旅のバカンスを楽しむこなき爺と砂かけばば。こういう老後の異性の友人ってのもいいよね♪みたいな。いや、今後の時代、結構重要かも。
人間社会に埋没できているのも今風の妖怪ですな。
そして鬼太郎の長年の功績ゆえに母親岩子さんに会えるといういい話もある…はずだった。


さて、妖怪でも神の創造物、妖怪そのものは神ではない。
妖怪もまた神の創造物である「弱さ」ゆえ、人魚から濡れ女へ変貌した彼女もまた人間たちのいう「裏切った」という言葉をうのみにしたまま恨みを抱えて千年。


「障害」もちの人間にはその世界はフィクションではない。


イスラームでは「インシャラー」、アッラーの思し召しという言葉がある。
そして死んだときに救われる世界を語る。


なぜか?合理的な理由がある。


この世というのは不条理に満ちた世界である。
当然「何も悪いことをしていないし、いいこともしている」のに、ひどい目にあうことがある。
それが積み重なって、死の向こうに何もない、ということになると、人間は「生きているうちに早く元をとろう」と考えるのだ。そうすると何が起こるか。
欲のままにすべてを奪い合うまさに修羅の世界となる。
昨今の不条理な連続・大量殺人のような凄惨な世界が日常的に繰り返されることになる。
つまり「あの世」というのは「あの世は本当にあるかどうか」でなくて、「あの世」という「この世」を守るためのセーフティネット、セキュリティシステムなのだ。


そして濡れ女に変貌して、多くの魂を食らった人魚もまたその心理的わなにはまってしまった。
そしてその想いをさらにずるい人間、いや妖怪ぬらりひょんに利用される。


今回のラストシーンは「会えるかどうかわからない」、人間の世界と妖怪の世界の違いという現実をも受容したいい別れだったと思う。記憶を消されることなく、それぞれの成長をして、お互いの世界へ帰っていく。


また続編みたいな。でもラストでねずみ男がぬすんで海におとしたあの金の像…あれ第三弾またやるんだろうか。