色川旅情

「色川いくの?ここ私のふるさとよ、なんだ、相談してくれればよかったのに。」



旅館の女将の故郷だとのこと。
地元に小学校のなかった時代、色川でうまれ育ち、
市野々小学校まで車で一時間かけてかよった。
やがて農業で食えなくなり、故郷をあとにして町に出た。



色川の集落は過疎化して、人がひとり2人といなくなっていく。
女将の菩提寺の妙法山・阿弥陀寺
先週寺のイベントがあったときのあいさつ。
「生きていたのね。」
檀家さんも徐々に減っていく。



今回のたびの目的として「色川へいってみたい」というものがあった。
色川の棚田。



消え行く集落、過疎化を懸念して、
都市からの移住支援を行うことになった。


いわゆる「田舎暮らしIターン」支援だ。


籠ふるさと塾というのがこれをやっている。
- 和歌山県 那智勝浦町 - 籠ふるさと塾
http://www.town.nachikatsuura.wakayama.jp/forms/info/info.aspx?info_id=13316


ここは少し変わっている。
住民の3人に一人が移住者という結果になり、
Iターンの成功例といわれている。


ここをみつけたのはインターネット検索で
「棚田を守ろう」会のHPを見つけたことだった。
棚田を守ろう会/日本の山村文化の象徴「棚田」を守ろう!
http://www.zb.ztv.ne.jp/tanada/


棚田なるものをみてみたいな〜という気分で検索したのか。
那智勝浦にあるとは思わなかった。
棚田を守ろう会 米作り日記
http://tanada.ikora.tv/



http://www.furusato-irokawa.com/


http://www.zb.ztv.ne.jp/hyakusho/index.htm
http://www.zb.ztv.ne.jp/hyakusho/index.htm


本日23日はレンタカーで串本、そして色川に行く予定だった。
女将に道を聞いて考えた。
色川の「足」はない。町営バスが日に3本。
紀伊勝浦から近いかもしれないが、道がよくないかもしれない。
串本は42号線をいくことになる。
であれば、先に色川にいくことにしよう。


ナビの設定にも困った。
どこにいけば色川の棚田につくのだろう。
円地山公園(オートキャンプ場)を目標に設定した。
出発。
色川・小阪地区がたぶん棚田のメインだなと思う。


那智の滝へいく43号線をいくと「井関」という町がある。
そこからゴルフ場にいく道がある。
そこへはいっていく。
もちろん那智の滝を経由して妙法山・阿弥陀寺をいく道もある。
だが、そこは遠回りになる。
時間にして1時間ぐらい。
だが、なにもない道の1時間だ。



大きな地図で見る



「走っているうちに不安になると思うよ。」
と女将がいった。



このような道をひたすらいく。
途中町営バスとJAの車とすれ違う。
予想はしていたが、町営バスはマイクロバスだ。



水をはった棚田に出会う。
そこで作業している方に聞く。
「棚田の体験塾とかをやっているところはどこですか?」



雨なので車の中から写真を撮る。
後続車がいないのでマイペースに進む。



心を奪われた棚田の風景。
われを忘れて呆然と見つめていた。
後続車に気付くのが遅れた。
男性が降りてくる。


「すみません、すぐ動かします!」


「どこから来たん?」


「東京からです。」


「心洗われる風景やろ?」
「ええ」
「神々しい風景やろ?」
「ええ」
「わしは鹿児島からや」


鹿児島で仕事をしていたが、和歌山へ移住、古座で農業をしている、とその男性はいった。


「若い人が面白いことやっているとは聞いたよ。
興味があるけど、古座に腰をすえてしまったからなあ。」


でも…。


「ここで農業をやるのは若い人でないとできん。
体力がものすごくいる。
わしも50を超えたが、
ここで農業やれるのは50〜60までや。
60すぎたらどうしようかと思うとるよ。」
「…」



棚田には大型の機械が入らない。
小型の機械をいれようにも耕作面積が小さい。
農業スケジュールが他の方のとかぶるため、
機材の共有は困難だ。
ゆえに人力でもメンテナンスになってしまう。



やがて、体力がおとろえて、農地を放棄していく。
放棄された農地になぎの木が植えてある。


話しているうちに3台目の車が後ろにつく。


「ではそろそろ」
それぞれの車にのりこんで別れをつげる。

「神様の木」と男はいった。
なぎの木。
南木とも梛、椥とも書く。
ナギ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%AE

その名が凪に通じるとして特に船乗りに信仰されて葉を災難よけにお守り袋や鏡の裏などに入れる俗習がある。<<



途中、よろず屋さんを見る。
地元のコンビニエンスストア…だが、あくまで地元のなんでも屋のようなものだ。
しかし日用雑貨や野菜の直売をはじめ、お土産用の色川茶、塩なども扱っている。


ここで茶とめはりずし用の高菜を買う。


色川の茶畑。

もちろんネットでも商品は購入できる。


http://16kawa.com/test02/shop.html
http://16kawa.com/test02/shop.html


「棚田守るイベントやっているところはどこですか?」


「あれ?○○さんだよねあれやっているの」
「連絡とろうか?」
「いえ、今回はみにきただけなのでまた改めて」


ええわだ!色川の冊子を売っていた。
購入。


ええわだトップ
http://www.zc.ztv.ne.jp/enmanji/eewada/eewada-top.html


「ところで郵便局はどこですか?」
郵便局があることは知っていた。
村でたったひとつの金融機関。


「ここ、お金おろすことできますよね?」
「できますよ」
財布の中に札がなくなった。
途中までの道でおろせなかったのだ。



色川郵便局へいく。
駐車場がいっぱいでとまれなかったので、奥へいったら、
色川小学校と色川中学校にでてしまった。



色川小学校。現在17名在校だそうだ。



色川中学校。


色川中学校。
廃校か?と思ったらまだ続いていた。


戻って必要なお金を下ろす。



さようなら、またくるよ。


そして串本・大島へ出発。
43号線を南下してさらに45号に入る。
ひたすら42号を目指して走る。
対向車も後続車もいない道。


42号にでた瞬間、この世に帰ってきた気がした。