「エジプトでは何が起きていたのか?」講師:田原牧(東京新聞記者)
26日はしんじゅく多文化共生プラザにて、「『エジプト革命』の日、カイロで見たもの」という講演会が午前中にあった。
この情報をtwitterで拾った。
イスラーム公開講座特別講演会「エジプトでは何が起きていたのか?」
講師:田原牧(東京新聞特別報道部)日時:2月27日(日)10:30-11:30
「仕事があるからいけないかも」と思ったが幸いにして参加できた。
ムスリム協会主催である。
http://muslimkyoukai.jp/
http://muslimkyoukai.jp/
講師の田原氏には八年前に縁があり、久しぶりの再会であった。
彼女のキャラの関係か、あとでTwitterをみると、
会場内、ムスリムと性的少数者が混在するという非常にシュールな展開になっていたとか。
最前列にいたので気づかなかった。
ま、基本的に当事者がそうであること自体はイスラムの教えで罪ではないが、
どの問題でもそうであるように、
いくらイスラムの坊さんがあれこれ論理的に説明しても、
こういう問題は一般の人になかなか深く理解されるものではない。
さて、本題である。
田原氏の著作その他は以下。
- 作者: 田原牧
- 出版社/メーカー: ユビキタスタジオ
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
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ネオコンとは何か―アメリカ新保守主義派の野望 (世界書院MGD)
- 作者: 田原牧
- 出版社/メーカー: 世界書院
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- 作者: 田原拓治
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イスラム最前線は私のオススメである。
田原氏は80年代から中東を扱うジャーナリストとして活躍し、
90年代に四年間エジプトで暮らした人物である。
先の著作でわかるように、
あらゆう中東の著名人にインタビューを行い、中東地域での知己も多い。
当然職場(東京新聞)でもチュニジアでジャスミン革命が起きた際に
「エジプトでも同じことがおきるか?」ときかれて「NO」と答えた。
エジプト人の気質を考えて、である。しかし、現実は逆であった。
「エジプトでなにがおきているのだ?」
休暇をとり、なんとかカタール航空の切符を手配し、エジプトへ飛び立った。
■エジプト革命の原因は?
今回のエジプト革命は「わからない」という。
専門家のみならず、普段は知ったかぶりである種の「答え」をだすエジプト人でさえ、今回の革命はわからないという。
さらにアメリカやイスラエルも「ムバラクは大丈夫」と考えて、今回の革命は予測していなかった。
かの有名なエジプト人ジャーナリスト、モハメド・ヘイカルは「対話しましょう」としかいわない・・・。
■タハリール広場周辺のみ
デモがおきているのは、タハリール広場周辺のみで、例えばタラートハルブや、電気街のほうはいつもと変わらない日常生活がある。電気街からコードをひいて、携帯電話の充電をしている。それを利用してyouTubeなどにデモの様子を投稿している。
広場のそばにはムスリム同胞団が主に運営する「救護所」「弁護団」のテントが設営されている。
■デモの主役は若者というより子供?
革命はカイロアメリカン大学ではじまった。
参加者で多いのは学生。
ちょうど大学が休みだとのこと。
デモはひとことでいうと「お祭り」
革命の担い手は若者…というより、子供。
軍が守るなかは、実はピクニックあんど運動会状態に。
実際の新聞にも、馬跳びをしたり、かけっこをして遊ぶ大人たちの姿が。
お茶売りがきたり。
コシャリ屋の出前がきたり。
お父さんが子供連れでデモに参加する。
子供が「楽しかった」とともだちにいう。
すると友達もパパにつれてきてもらう。
口コミで広がる。
参加者が数十万人になる。
これが政治的圧力になる。
<配布資料より>
怒りの金曜日、軍の中立と不出馬、バルダギーヤ(ラクダ部隊)の襲撃、対話、スレイマンの譲歩、エスタブリッシュメント、挑戦の金曜日
市内の説明、警察の炎上、タハリール広場、国営テレビ前で
■高揚の動機、原因は?
<配布資料より>
経済状況、通信技術、汚職警官の横暴、オバマ
経済状況、雇用問題や政権の長期化や腐敗、と世間一般にはいわれている。
しかし疑問が残る・・・とのこと。
なぜなら、これは今にはじまったことではないと田原氏はいう。
宗教政党が認められていない?
これも今にはじまったことではない。
ムスリム同胞団やイスラム過激派などアルカイダ系テロ組織の扇動???
いや、純粋に「若者の革命」だ。
しかし・・・なぞが残る。
ネット革命。ネットは道具であり、道具をつかう人間の思想のほうが大事。ネットで広がりはしたが、主原因ではない。
汚職警官の横暴。90年代にイスラム過激派のテロが多発した際に、警察の捜査の権限が強くなった。その関係で横暴、暴走した警官も多い。(さとし:エジプト人は警察は嫌いだが、軍は好きである。)
でも今にはじまったことではない。
数十年前からずっとあったことだ。
エジプト人というのは「知ったかぶりをする」と田原氏はいう。
私の解釈では自分の枠内の最大限の努力でなんらかの「答え」をだす人間といってもいい。
そのエジプト人をして「わからない」という。
いろいろなエジプト人にインタヴューしたそうだが、
「わからない」
これは重大なことだ。
時代が経過するのをまたないと本当の正体はみえないのでは?
というのが現時点での田原氏の結論?である。
・ソ連型経済から脱却し、活性化
・三十年間戦争なし
・エジプトのアラブ世界における地位回復
・200億ドルの借金を消す
・ムスリムとコプトの対立の緩和
実績としてはすごいこと。
ゆえに「引退を宣言」したときに、
「おいつめるのはやめよう」
「最後に華をもたせようよ」
そういったエジプト人も多いという。
(さとし:まさにエジプト人らしい言動だ。)
しかし、それは旧世代の価値観だそう。
<配布資料より>
ムバラクの誤算、広場の膨らみ方、ネット、ジャジーラ、BBC、アラビーヤ
「ネットをとめればとまるかも」止まらない。
「交通網をとめれば」止まらない。
「アル・ジャジーラをおいだせば」ほかのメディアへ。
もうどうすればいいかわからない、混乱する旧世代の人間が垣間見える。
<配布資料より>
旧世代の違和感、退陣前夜、ムタアッシブな若者、ムバラク評価、パレスチナ、ネットと基準
■旧世代の違和感
35歳以上の人にとっては、今回の革命には違和感がある。
「ムバラクはなにを悪いことしたのか?」
報道されているなかには、財産をしこたまためこんでみたいな話があるが、湾岸の金持ちに比べれば微々たるもの。
確かにここ10年は「老害」といえるが、ムバラクの評価できる業績は大きい。
が、若い人にはそうではないらしい。
私にはなじみのあるアラブ型の統治の仕方。
英雄が強いリーダーシップを発揮して国を運営する。
だが若い人には「独裁、長期政権ただそれだけでNG」なのだそうだ。
■ネットと基準
「エジプト人が誰でもPCをもてるわけではない。なのになぜ『ネット』?」
違和感を感じた田原氏がエジプトにいって納得。
町のいたるところにあるネットカフェ。
たしかに10年前は20EGPとかなり高価だった。
今は1時間1EGP。
つまり、朝食の値段と同じ。
幼稚園児まではネカフェにきては、ゲームをやっている。
ネットを通じて、欧米の文化がはいり、欧米の価値観がはいる。
ある種の文化的侵略がある。
コンピュータ教育が盛んなので、基本的にコンピューターを扱える。
しかし・・・かつてアラビア語教育に力をいれたがゆえの、アルジェリアの悲劇につながらないか?
<配布資料より>
新世代の流儀、シャクリーヤな野党、相互非難なしの一点共闘、英雄待望論より、広場の秩序、多種多様、清掃
■新しいエジプト、「連帯」
基本的にこのデモをしかけたのは、カイロ・アメリカン大学の学生である。
名のとおり西洋的な教育をうけた進歩的な人たちである。
その場所にはシャーフィーの人たちもいて、しかし「いなければならないのだけど・・・」といった面持ちでたっている。
そして・・・あれだけの人間がいて、エジプト定番の「ちかん」と「すり」がいない世界。
<配布資料より>
非合法団体の決断、ムスリム同胞団、共産党
バルダギーヤの襲撃に「殴られ役」をひきうけるムスリム同砲団の人々。
赤旗を発行しない共産党。
<配布資料より>
アメリカ戦略云々よりもエジプト人の革命
■パレスティナに関するスローガンがない。
デモでは定番の「エレサレム奪還」や「シオニストを追い出せ」がない。
<配布資料より>
アウラマ、カリフ制
■グローバル社会とはいうが・・・
日本ではどうしてもグローバル社会と聞くと欧米型のグローバル社会を思い浮かべるが、
イスラーム的価値観でいうグローバル社会とは「カリフ制」のことだ。
・・・という話を専門の中田考先生に聞きたかったそうであるが、不参加ゆえ、かなわず。
「欧米・西洋グローバリズム」VS「イスラーム・グローバリズム」・・・になるのか?
中田考 - Wikipedia
http://homepage3.nifty.com/hasankonakata/index.html
<配布資料より>
変わらない風景、軍の文民移譲宣言、野菜売り、就職、民主主義
■民主主義に夢をもちすぎ???
民主主義がいいとはいうが「どういう民主主義か?」ときくと答えられない。
「青写真がない」
また、「民主主義になれば就職がきまる???」→安易な夢。
<配布資料より>
こけた為政者たち、カウミーヤ、左翼ゲリラ、イスラム主義、トランスナショナルジハーディスト、アサンジュ主義、
時間切れで話がなく。
<配布資料より>
中東版カラー革命か?
日本。
質疑応答で「日本???」
エジプト悪い国、日本はいい国?か?
実際には・・・。
■質疑応答ーメモより
一、トルコやインドネシアモデルの民主主義はどうか?
トルコはトルコマフィアの力が強いから、エジプトで同じ様に考えることはできない。
インドネシアも同様。
軍の経験者が政治をとる。
大混乱。
二、軍部について
基本的に軍部の力は外せない。
文民移譲はいずれ行われるが、一般市民の軍への憧憬は考慮に入れる必要がある。
エジプトの軍部。
軍部が企業グループもレクリエーションももっている。
ムバラク政権と心中して破綻させたくない。
また、軍部はアメリカで訓練をうけるなどでアメリカ型の教育をうけており、考え型はアメリカ型である。
三、アズハルはどうしている?
イスラーム・スンニ派のアズハルはどうしている。
沈黙をまもっている。
ユースフ・カラダーウィが発言しているが、アズハル内ではそれほど力はまだない。(権威がそれほどない)
以上。
私のメモを起こしてかいたので間違いがあるかもしれません。
ご了承くださいませ。
<終わり>