科学戦隊ダイナマンとNHK大河ドラマ「平清盛」
今参画しているプロジェクトをやっている会社は映像・画像に関す開発に強い会社だ。
会社のメタモデルのごとく毎週朝礼をやっていてそこでいい話をたくさん聴ける。
私が大学を卒業するころはまさに就職氷河期のどん底だった。
そのために見切りをつけてはじめから就職活動というものをやらず、結果IT傭兵を経て会社をつくったわけだけど、その後第二新卒という言葉がではじめた25歳のとき、唯一「正社員募集」で応募したのが今いるプロジェクトの会社だったわけだ。
未経験OKだったのだけど結局500人が応募し、二次試験の筆記で落ちた。
IT技術屋としての勉強をしていなかったから仕方がないのだけど。
ものすごい奇遇だなあと思う。
IT屋、つまりSEってのは多くはビジネスソリューションとよばれるもの、すなわち会計ソフトだとか「仕事の道具」をつくることが多いのだけど、ここは制御系、つまりカメラを動かすとか、実際に機器を制御、コントロールする部分をつくることになる。
ちょっと珍しいというか、「漫画書き」だしDTPをやっていたこともあり、おもしろそうと思ったのでそのとき応募したんだな。
最終的に独立をめざすのだったらSOHOでできるものはやらないので技術的に厳しいかもしれない。けれどもかなり奥の深い仕事をするのでできる人が限られる。さすがに傭兵技術だけでは歯がたたず「現場の素人」で戦々恐々、日々勉強、覚えることいっぱい、の毎日だ。
自社のほうもばたばたでゆえにtwitterのみでブログの更新をできないことがおおかったけど…。
さてその会社のお仕事は映画や映像に強くてこの間開発したソフトウェアで賞をとったらしい。
今の時代CGを使わない映画、アニメ、特撮は存在しない。
そしてそのソフトのおかげで仮面ライダーや戦隊ものの撮影コストが時間・金額ともにぐっとさがっていろいろな「冒険」ができるようになったらしい。
「ぜひみてね♪」ということでかなり久しぶりに仮面ライダーや戦隊もの、とあいなったわけである。
まずネットで検索して世界観を予習して、いざ視聴。
ゴーバスターズと仮面ライダーフォーゼだ。
いわずもがなかもしれないが仮面ライダーのほうが予算はたくさんでているから、世界観としては豊かだ。
tv asahi|テレビ朝日
tv asahi|テレビ朝日
「ほうほう、ここの部分(特に変身シーンがミソ)のことかなあ」と思いながら見ていたわけだけどふっと気になったことがあったのさ。
「戦隊ものの世界観が貧しくなっているなあ」
私が戦隊ものの名作をあげろといわれたら真っ先に「科学戦隊ダイナマン」をあげるだろう。
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1983年という私が9歳ぐらいという子供の人生で最大のインパクトをうける時期であったということもあるのであろうが、この戦隊ものは戦隊もののなかでもものすごく画期的、というのは悪の世界、敵方の社会的価値観・システムもしっかりかかれていたからである。
すなわち「王家のごたごた」のドラマでもあったのだ。
この物語の素材が古代エジプトをはじめとするオリエント世界だったのもよかったのかもしれない。(ちなみに正義のほうは「野球」をイメージしているらしい)
この戦隊ものの魅力はジャシンカ帝国の王子、メギド王子の成長物語でもあったことにある。ジャシンカ帝国は尻尾のある人間が階級が上でない人間は下等生物である。その価値観を地上人であるわれわれに植え付け、支配体制をつくろうと考えていたわけだ。
その帝国のあととりがメギド王子(しかも渡辺謙似のイケメン!)で、そのおばかで未熟な王子を中心に父である帝王アトン、教育係?のカー将軍、父の妹の娘である従妹のキメラ王女、そしてどう考えても「帝王アトンの元カノ」としかおもえん(苦笑)女将軍ゼノビアを中心とした「王家の物語」が展開する。
これが楽しかった。最後に「尻尾という目に見える価値観にとらわれずに生きる」というメギド王子の成長、しかし結局は新帝王になった直後、キメラ王女とともに死んでしまうのだけど、人生における人間関係、政治力、そして逆境のとき、どんでんがえしというものをこの戦隊もので学んだ気がする。
(ぼんぼんで育っていたのが、ある日突然「父の女」が現れて尻尾すべて切られて勘当される、というトンでもない逆境に襲われる。現実世界的に表現すれば、父の愛人に虐待されて身体に後遺障害が残った男が復讐を果たして父に信頼され、後継者に復帰というものすごい人生…)
意外に潜在能力的に私の精神的助けになっているのかもしれない。
いつから戦隊ものをみなくなったのだろう。
たぶん戦隊ものの予算がでなくなったころにまずターボレンジャーで正義の味方のキャラがかぶりだした。そして悪役がきぐるみをかぶるようになり、メギド王子、カー将軍という魅力的な男役がでなくなった。
で、面白くなくなった。
キメラ王女に代表される「色気悪役女性」さすがに呼び水なのでぎりぎりまではずされていなかったけれど、今回ゴーバスターズをみるとそれすらいなくなった。
「うーーーーん」と考えてしまった。
今年のNHK大河ドラマ「平清盛」の視聴率が悪いといわれている。
古代エジプトものの私が日本物で研究したのは平安末期である。
後白河法皇の愛人であったとされる藤原信頼のおっかけをやって、源義経の同母兄、北条時政の軍師で源実朝の乳母夫であった阿野全成のほれた。阿野全成主人公で漫画を描こうとして保留になっている。(たぶん小説になる)。
一番好きな時代のしかも脚本とかもすごくいい作品と思って毎週わくわくしながら見ている。
私の中ではたぶん今までの大河ドラマのなかで1番になると思う。
が、よくないという。
こんだけ魅力的なキャラがあつまるあの作品の何が悪い?
BSが18時からあるので、そちらに視聴者をもっていかれている可能性もあるとの指摘がある。たしかに18時代はほかに魅力的な裏番組がないのでそちらのほうがみやすいかもしれない。(ところで裏番組なにやってんの?)
あとはテレビ離れ、それどころじゃない日本の状況。
しかし大きな問題は友人たちと話したところ「世界観が理解しにくいのでは?」ということだった。
視聴者が共感して感情移入できるような世界観ではないということだ。
このドラマ、「平安のリアリティ」がテーマになっているが、その負の部分がでている感じだ。(「平安のリアリティ」だから面白いと感じるのだが)
だがその面白さがわかるのは「一部の『マニア』だからだ」という。
NHK大河ドラマ「平清盛」の世界観に比べて現代人の世界観があまりにもせまいのだ。
だから複線が非常に複雑にてんこもりになっているように感じて、ゆっくり展開しているようで逆にみていて理解するのに忙しくなり楽しめないのだろう。
「系家族」という言葉がわかるだろうか。
「同族経営」という言葉がわかるだろうか。
科学戦隊ダイナマンにみるような家族の一員でありながら同時に組織の経営者である、という皮膚感覚が現代の日本人にはないのではないか?
だから非常に感情移入がしにくいと感じるのかもしれない。
これは私が日常生活でのつきあいで感じる「違和感」でもある。
たしかに父が働き、母が子を育てる「父、母、子供」の世界というのはおそらく今の75歳ぐらいの人からがそうだろう。いわゆる「核家族」である。
「核家族」の歴史が長いため、すでに親戚・一族が介入してくるような大規模家族の経験がないのではないかな?
大規模家族のなかで役割があってそれに翻弄されながら生きるという経験をしている人はマイノリティなのではないのか。
たぶんあのドラマの「平家」を「家族」として理解しようとすると「違和感」が生まれるのだと思う。
「白河法皇の子では?」といわれる清盛。なぜ父忠盛の血を引かない彼が平家の棟梁になれるのか。
「あの時代はそうだった、王家とのコネクションが大事だから」といってしまったら思考と感覚が停止する。
「家族」でなく「同族経営の会社」と思ってみたらどうだろう。
「株式会社 HEIKE」である。
荘園その他を株券と考えて、その配当もある。
しかし事業は警備業が本業であるが、ほかにも貿易にも手をだしている。
急成長している新興の会社である。
池禅尼である宗子さんはいわゆる「専務」。その役割は「男子校の中にいる気分(和久井映見さんコメント)」、「相撲部屋のおかみ」といったところだろう。実は彼女が顧客の強いコネクションをいっぱいもっている。「株式会社 HEIKE」のミッションをになっているのが実は彼女なのだ。そのいとこである藤原家成さんも新興の企業の社長でコネクションつくりながらコーディネートしながら、そして系列会社も育てながら急成長している。
そんななか突如あらわれた清盛は同族・血縁者ではない。
しかし社長になった。
「家族」でみると違和感感じるが、そんな会社はオリンパスの例をみるにかぎらずたくさんあるだろう。たまたま子供のときから社長候補として育てていただけのことである。
そんな感じで摂関家、王家もみていけばなんとなく整理がつくのかなあ。
でも経験上それでも難しいかもしれない。
経営者目線ができない人も増えているからだ。
「ゴーバスターズの世界観の貧しさから考えて、広い人間関係を把握して構築する能力が落ちているのかもしれない」とある種の危機感を感じた1件であった。
清盛が本格的に活躍するのは42歳のときからだ。
もともと複雑な社会関係をもつ平安末期に保元の乱前が冗長にごたごたするのは仕方がないかもしれない。
一人の人間の人生からおっかける私の特性として、たとえば信頼を知りながら、頼長を見逃してしまうなど、視野狭窄な傾向のある私としては意外に知らない人が多くて目からうろこの楽しみもあって。
応援したいドラマである。