髪」のこと 美容院とのおつきあい

■美容院のこと
階下で新しく作られている美容室があす開店のようだ。
若い美容師たちが開店準備でわいわいしている。
若い子達が集まってくるというのはいいことだな。


楽しそう…。


美容室恐怖症なところがあった。
「自分はこうしてほしい」と要望を伝えるが苦手だった。
それは「私自身を伝えること」だからこわかった。
そして
「担当している美容師さんが
私という『素材』にどういう絵を書くのか」
それがものすごく怖かった。


はやりもののヘアスタイルよりも
私の人となりを伝えるひとつの「形」がほしい。


そういう考えを他人に伝えることのできない時代は
余計に美容室恐怖症だった。


ある程度自分の想いを外に表現しやすくなった
この歳になって、
「プロにゆだねてみよう」という気になった。


■髪の「絶対量」
基本的に超ロングヘア時代だと
美容室関係ないと思うかも知れない。
けれども実際のところいろいろと世話になる。


超ロングヘアとはいってもワンレングスではなかった。
前髪とサイドには動きがほしかった。
一番悩んだのは「前髪」の問題。
どんなにセットしてもぺちゃんこになってしまう。
そうすると宅八郎のようなおたく兄ちゃん。


たらした前髪のかっこいい兄ちゃんっているじゃん。
高校生ならそういう年頃。
さんざん自分で試行錯誤して、美容室へ相談。


…諦めた…。


「前髪の絶対量が足りない」


「超ロングにしたら体に髪の毛がぴったり這う〜〜〜〜。」と
なげいた母ほどではないが、
とにかく髪がほそくて、量も少ない。
絶対量が少ないとボリュームを出すのがほぼ不可能。


トップやサイドの髪を多めに切れば
ヘアスプレーがんがんかけてセットすれば、
なんとかなるかも知れないが、
それは私の美学に反する。


とりあえず前髪とサイドの髪は
いわゆる姫様カットの変形版に。
(ようするに無造作にカットする)
結局数十年正面からの顔立ちは
それが「定番=デフォルトスタイル」となった。

というわけで今のところ、
運転免許やパスポートはそれが定番である。


■黒髪のストレート
スキンヘッドから伸ばした短髪のときにいわれた。
「あれ?髪質変わった?」


ちがう。天然パーマではないが、
いわゆるくせっ毛。
短いと5cm〜10cm間隔でくるくる巻いてしまう。


1、2歳のときは根本進先生の4コマ漫画「クリちゃん」状態。


伸ばしても完全なストレートではない。
なので、実はストレートパーマかけていた。


ある美容室で
「これはストレートパーマではなくて、
トリートメントでいけるかも」とのことで、
強めのトリートメントかけてもらったら、
たしかになんとかなった。



■バーコードは1日にしてならず
髪型のデフォルトスタイルをきめてしまうのは男性に多い。
ある年代で自分の髪型をきめるとほとんど変えない。
変わった場合はデフォルトに戻りたがる。
男性脳には「同一性保持への固執」という性質があるらしいが、
たぶん髪型にもでるのだろう。


しかし男性の自己アイデンティティをゆるがすのが
やはり「髪の問題」すなわち「はげ」である。


実は「髪」の障害は研究が難しいとされている。
人間の髪と同じサイクルをもつ動物がいないため、
極論をいうと人体実験しかできないからである。


なのでいろいろな研究結果がでているが、
情報が多すぎてさらに振り回される、というのも
この「障害」の課題であろう。


「はげ」の悩みはネットで検索すれば多く出てくるが、
私なりに一番きついのはなにか?と
いうことを考えたことがある。


たぶん「はげ」つつあるときに
「髪がまとまらない」ことだろう。
これは「しんどい!」と思った。


「はげ」を隠せるレベルもしくは
「はげ」をみせてしまうレベルであれば
本人の自己イメージも安定する。
(再構築&再受容が完了する)
よほど別の障害がない限り問題はないだろう。


問題は移行しているときというのは
「どうしたらいいのやら」状態におちいる。
全神経が「髪の問題」に集中して、エネルギーをとられて
あらゆる行動に制限がかかってしまう。
そしてさらにストレスの原因となる。


隠そうとしても隠し切れない、
かといって、みせてしまおうにも中途半端。
この状態は「どうするべきか」大変悩む。


「バーコードは1日にしてならず」という言葉を聞いたことがある。
「なりたくてなっているわけではない」とのことだった。
「移行期」に髪のセットに悩み、
試行錯誤の結果、バーコードになっているとのこと。
さらに今度はなってしまったバーコードを
「リセットする」タイミングがつかめず、
「同一性保持」の本能にもひきずられ、
さらに職業的に髪型に制約(坊主やスキンヘッド禁止など)
余計にニッチもさっちもいかなくなる、ということらしい。


これはどこかで「きっかけ」がないと
いけないということだろう。


「はげ」だけど美容室に行きたい、という声もある。
逆に「悩む」からこそ、いったほうがいいと思う。
相手は「髪」のプロだ。
ただし背中、いや頭をまかせられるプロをみつけだすのは容易ではない。
めげずに何人か当たってみるといいのかもしれない。


しかし「はげ」という弱点をさらけだして
相談するのは勇気がいる。
相当「自己愛」強くないとできないことだろう。


本人の自己愛の安定感を非常にとわれる瞬間…。


ということは早めに「私自身を伝えること」に
なれることは大事なことだといえよう。