聴性脳幹インプラント(ABI)について

私自身聴覚障害であるが、聴覚障害の知識がなかった。そのため小学校の同窓会会報に「聴覚障害の医療の情報」がのっていても、内容がほとんど理解できない、ということが多かった。


「自分の専門家は自分にしかなれない」
「何人も神の手をこえることはできない」


だからこそ。自分自身を改造するためには「自分が必要なこと」を知り、「その必要なことを満たす技術の現実」を知る。


さて、そんな感じで検索しまくっているうちにひとつのHPにたどり着いた。


「えっ!補聴器って自作できるの???」


いや、パソコンやラジオを自作できるのであれば補聴器を自作できないことはないと思うが…。


論理的には確かに…。でも私は電子系統非常に弱いんだよな。むしろ相性そのものが悪いと考えてもらったほうがいいかも。この前眠らせていたサーバ用マシンを立ち上げてOSいれようとしたら、それ以前にWINDOWSのマシンがふっとんだ。急遽代替マシンをだしたが、それもふっとんだ。2台故障。一台は復旧したが一台はまだ。。。「とっととこの業界から足を洗おう」と何度思ったか。


ただし、耳穴式や耳掛け式、デジタル式は自作は不可能との但し書きあり。(材料の入手ができないからのようです)。


補聴機器勉強会
http://www.hochokiki-benkyokai.net/


ここでみつけたのが聴性脳幹インプラント(ABI)の記事。

「欧米で150人、日本で. 1人の成功例がある」「アメリカやドイツを中心に450人以上の実施例があり92%の人に有効」…。


News13 日本初のABI(人工脳幹)手術
http://www.hochokiki-benkyokai.net/news13.htm


「ええっ!なにこれ!」ということでさらに調査をすすめる。<参考>
人工臓器
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%87%93%E5%99%A8


虎ノ門病院
http://www.toranomon.gr.jp/site/view/contview.jsp?cateid=11&id=53&page=1
最新の難聴治療の実際 虎の門病院耳鼻咽喉科 HP
http://homepage3.nifty.com/hearing-medicine/

虎ノ門病院 熊川孝三医師による人工内耳と聴性脳幹インプラント(ABI)の説明(図付)
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n245/245005.htm


聴性脳幹インプラント、ABI(Auditory Brainstem Implant) とは脳幹を直接に電気刺激し聴覚を取り戻す人工臓器をうめこもう、というものである。さきの人工内耳と内耳再生医療と何が違うのか。これは「腫瘍などで聴神経がやられて存在しない人間」に有効な技術なのだ。人工内耳も内耳再生医療もその先に音を伝える聴神経がなければ意味がない。このオペは聴神経をこえてさらに脳に近い部分まで刺激するのだ。


1999年7月に25歳の聴神経腫瘍(神経線維腫第2型)の患者に行われ、このときは読話を併用した簡単な会話がわかるレベルに回復した。2005年8月の3例目の60代の男性のオペでは18年ぶりに聴覚が復活した初の例となった。



虎ノ門病院が独占でオペしているような感じをうけるが、ほかでやっているかは不明。


18年ぶり聴覚復活 いわきの男性 運転免許再取得(2005年08月09日)
http://jyoho.kahoku.co.jp/member/backnum/news/2005/08/20050809t63004.htm


■どこでつくっているの?

日本コクレア社
http://www.cochlear.co.jp/
ABI装置(Nucleus多チャンネル聴性脳幹インプラント
http://www.cochlear.co.jp/productinfo/default22.htm



ガイドライン
アメリカでABIのガイドラインによる適用基準は以下のとおりである。
1.神経線維腫症第2型(両側聴神経腫瘍)であること
2.12歳以上であること
3.インプラントは左右いずれかの腫瘍切除時に実施すること
4.他に重篤な合併症がなく心理学的にも適合していること
5.ガンマ・ナイフ治療(放射線治療)を受けていないこと


※人工内耳と同じで電磁波、磁気の影響を受けるため、MRIの医用機器などは原則として使用できない。



■手術費用
腫瘍切除手術に関わる麻酔料、投薬注射料、入院検査料 保険適用
保険適用されて20〜30万ってところか。とすると全額だと100万かかる?
ABI装置   300万円  全額自己負担(ひゃぁぁぁ…。気持ちは人工内耳と同じね…。)



「人体改造」および「サイボーグ化」ってひとつのテーマについて一式500万かかると考えて計算していい?(爆)

これは美容整形派のかたにも意見望む。


最後に私が聴覚障害問題と医療という視点で考える懸案事項をあげておきたい。



1.「ろう文化」の破壊につながる…か?
私自身はたとえば「日本文化」「岡山文化」そして「ろう文化」という形でひとつの文化でしか生きられない人間でありたくなかったのでグローバルスタンダードな五体満足人間をめざしたところがあるが、おそらくその考えをもつ当事者は少数派であろう。GID聴覚障害者にかぎらず大多数の当事者は自分の育った文化になじんで「当たり前」だと思っている。できればその文化のなかで一生をおわりたいとおもっている。聴覚障害が最先端医療で治療されていくことによって「ろう文化」が破壊されていく、という危惧も考慮にいれないといけないであろう。


2.学習障害自閉症などによる聴覚障害の治療法は皆無
補聴器からはじまって、聴力支援機、人工内耳、内耳再生医療、そして聴性脳幹インプラント聴覚障害障害にまつわる医療的・工学的情報を紹介してきたが、これが進んで「聴覚障害撲滅」というわけにはいかない。学習障害自閉症などの「脳の機能」にもとづく障害の場合は現代医学をもってしても治療は不可能だし、おそらくこれからもそうであろう。私が生きてきたように「五体満足というモデルにいかに近づくか」ではなくて「一人のNGをみんなで解決する」という発想に世の中が切り替わらない限り、この問題は解決しないだろう。


3.聴覚障害の当事者の精神科医が必要
2001年に「聴覚障害の資格制限」が改定されるまで聴覚障害をもつ当事者が医療現場にいることはなかった。その結果問題がおきたのは「精神科領域」である。聴覚障害者独特のメンタル構造を理解できない医師たちによる誤診・医療過誤があいついだのである。また、診療時間という制約のなかでの健常者/聴覚障害者の診療は時間的ロスが大きすぎる。聴覚障害の当事者の精神科医は絶対に必要である。


めずらしく1テーマでかきつづけた聴覚障害のシリーズも終わりにしたい。そのほかのテーマはまた次の機会に・・・。聴覚障害以外のテーマをもとめてきてくださったみなさま、よんでくださってありがとうございます。



最後にこれ・・・。感覚器医学ロードマップ。いろいろあります。

日本学術会議内 「感覚器医学ロードマップ」

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1030-15.pdf