講演会 エジプトの近代化と明治維新―似ている両国の歴史的体験

どうしようかな…とおもいつつ、行ってみることにした。
日本学術振興会カイロ研究連絡センター主催の講演会。

日本学術振興会
http://www.jsps.go.jp/

カイロ研究センター
http://jspscairo.com/

エジプト・カイロには日本学術振興会の中東支部がある。2002年の時点で「存続があぶない」なんている話がでてはいたが、なんとか「継続」しているようだ。


修士論文でお世話になってから7年ぶりに行く。


一時間早くつきすぎた。ザマレク地区にいくにはやはりナセル駅が便利。
マイクロバス乗ろうと思ったら、大渋滞でやめておく。
しかも意外に早くマリオットホテルがみえたので「歩きでいいや」と。


2008年度担当の大石教授にお会いする。
朝日新聞社の特派員として、ベトナム戦争中東戦争、強権政治化のインド、バングラディシュの軍事政変などを報道し続けた国際ジャーナリスト出身の異色の教授。


ゴルゴ13のようなするどい眼光で…ということはなく、激しいキャリアを感じさせないおだやかな印象の先生でした。それこそが本物のキャリアかもしれない…。
「留学生の方おられるから…」と紹介していただく。


留学生とお話しする。同じ大学の後輩たちもいた。
うわあ…まいったなあ…月日の早さを感じる。
この若さがうらやましい。


本日のテーマは「エジプトの近代化と明治維新―似ている両国の歴史的体験」。
カイロ大学文学部日本語・日本文学科長のイサム・ハムザ教授(Essam-Hamza)。


彼は大阪大学大学院で日本近世史を専攻し、13年間日本にいたとのこと。


その彼が「ميجي: قوى بشرية قادت التغيير」という本をだしたのであるが、これはNHKの「明治〈1〉変革を導いた人間力 (NHKスペシャル) 」の翻訳。

アラビア語
http://www.shorouk.com/ar/book_details.asp?book_id=1430&cat_id=31&sub_cat_id=


日本語

明治〈1〉変革を導いた人間力 (NHKスペシャル)

明治〈1〉変革を導いた人間力 (NHKスペシャル)


で、今日の講演会は「日本とエジプトは同じように近代化をすすめたのに結果が違ってしまったのか」がテーマ。


修士論文で得た結論ではあるのだけど、実は私が「エジプト」を研究フィールドにしたいと強く願うわけ。
最初は「偶然」だった。「僕がエジプトが好きだから。」
だが得た結論はおどろくべきものだった。
「日本法はエジプト法の影響も受けている」。


一応法システムをとると日本の法律は戦前はドイツ、戦後はアメリカの影響を受け、日本法の影響は韓国、台湾に及んでいる。そのため、2003年の特例法制定後、今度は2006年に韓国の特例法制定に「すこーし」かかわるような「おもわぬ展開」になってしまったわけだけど。


しかしだからといって「国際社会はこうだよ」という言葉には「日本」という国はなびかない。
「欧米ではこうだよ。」「アジアではこうだよ。」動かない。
イスラム圏からみても問題だよ。」までいってやっと動く。
これは日本が批准した人権に関する条約の実現が遅々としてすすまない部分からも現れている。


要は「日本は日本のやりかたでやりたい」わけだ。


こうした日本という国家運営の考え方は明治からずっと続いていて、だからこそ、原敬が「エジプト混合裁判所」という訳書をだしたのだ。実はエジプトからも影響を受けていたのだ。


なぜエジプトだったのか。それはエジプトが欧米の脅威のもとにそれでも「エジプトのやり方」で近代化をおしすすめた「先輩」だったからだ。


その後、修士論文は具体的な政策の提言に論をすすめてしまったのだが、今日の講演でハムザ先生が話をされる限りにおいて、結果的に近代化の結果を出すのは日本のほうが早かったようだ。


明治維新とはなにだったのか?それは思想の変換であった。
しかし、思想の変換にいたるまでのベースが明治維新の前(幕末)にすでにあった。
自分たちが国づくりにどのように参加するか、という思想もあった。


エジプトでは強力な独裁者による「うえからした」への近代化であったために、近代化政策で大きな結果がでたとしても継続的な力にはなりえなかったからではないか?というのが大きな枠での結論だったと思う。


やはりここでもテーマは「自立」だったかな、とも思う。


質疑応答。全部聞こえていたわけではないので、気を引いたとこだけ。
もちろん私も質問。


私:「俺たちのやり方で国をつくる」という考えと行動についてどうですか?(過去から現在に至るまで)
=>自分たちで国をつくる、ということへの自信がない。新聞などの記事も「社会が悪い」ということにとどまっていて、「じゃあどうすればいいか?」という提言がなかなかでない。NGO等の市民団体の活動もあるが、やっと成功する事例が出だした。


エジプト人かせいだ金を外国に投資する。
=>日本人も同じ(苦笑)。かせいアメリカにあづけるなど。理由は「銀行システムの未発達」。国内に投資する産業がない。


近代教育のしくみについても…。
=>アズハルの教育の解放、近代学校…>公務員養成。


・エジプトで現在盛んなものは「ハウジング」投資。


・女性の留学生が帰国しても学校に職がない。「女性だから」。だからジャーナリストになった。(女性の…で質問したのかな?)


・エジプトが日本より恵まれているところ。
=>人口の60%が40歳以下の若者。そして居住性。日本は国土の9%に1億3000万人が住んでいる。


セクシャルハラスメント
=>60年代まではミニスカートでも、ハラスメントはなかったが、現在はスカーフをかぶってイスラム的な格好をしていてもハラスメントがある。


・今の映画(エジプト)見るには金と時間がもったいない。
=>それくらい文化的価値が崩壊???


そして懇親会。某有名人のかたにもはじめてあう。


おしゃべりしたことのメモ。


イスラムの教え=マナー。マナーが崩壊している現在はイスラムの教えも崩壊してしまっている。エジプトは変わってしまった。


・土木研究をしている学生さん。
私:「緊急車両用道路をつくるのはどうよ?」
学生:「ルール違反ではしるやついるから無駄ですよ。」
某日本人:「みんな自分のことしか考えなくなったんだよね…。」


22時ごろ退出。30分歩いてナセル駅へ戻る。


久しぶりで面白かったなあ。いい刺激をうけたなあ。
23時30分、自宅到着。