イスラームにおける人間の心の五要素

イスラームの性別概念は動的なベクトルである」、という論理的説明はやった。


「じゃあ、実際のところはどうなんよ?」ということになると論理に対しての「証明(エビデンス)」が必要になる。
エビデンスはいっぱいあるんよ。


有名人のライフヒストリーを探すと…。

■ベクトル女性方面
カルーセル麻紀
カルーセル麻紀 - Google 検索


美輪明宏
美輪明宏 - Google 検索


美川憲一
美川憲一 - Google 検索


ジェンダーのあり方や経過はさまざまだけど、「男へ戻る」のプロセスはない…。


■ベクトル男性方面
沢田研二
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・YOSHKI (XJAPAN)
YOSHKI XJAPAN - Google 検索


・IZAM (SHAZNA)
IZAM - Google 検索


※若いとき女装はしても年を経るごとに男性化していく、女性ジェンダーにぶれることがない。


■脳の性別理論…。
Anno job logで引用された分界条床核で知られる、Swaab氏の研究…

http://d.hatena.ne.jp/annojo/searchdiary?word=INAH3&type=detail

これまでSwaabを尊敬していたが。
実はSwaab、頭悪いかも。
あるいは偉大な発見をしたいという虚栄心ゆえに、データを都合よく解釈する自己愛性人格障害か。


この論文のデータを素直に読めば、
「去勢により徐々にINAH3は委縮し、数年の年月がたつと、女性並の大きさになる」
と解釈すべきだと思う。

結論からいうと「脳の可塑性」とやらが疑われる…。
つまり「性別が永遠不変の【静的】なものではない」ということだ。


さて、イスラーム的性別が「動的なベクトル」であることを語ってきたが…。


くどすぎるほど…

■伊東聰 原案…。
1.肉体の性(物理的生物学的に成立する性、医学分野) 原則として不変
2.性自認の性(精神的・心理的に成立する性、精神心理学分野) 不変
3.属性(帰属)の性(認知的・意識的に成立する性、脳神経科学?分野 不変
4.オーラ(直感認識)の性(歴史的・人間関係的に成立する性、教育学分野
5.社会性(社会的文化的性、いわゆるジェンダー)、可変


「動的なベクトル」である性別を決定付けるのは「心の性」とされる「2.性自認の性」「3.属性(帰属)の性」である。
が、問題は「心の性」の「性」ではなく「心」のほうだ。イスラーム的人間観では「性別」があって「心」が決まるのではない。日本でも考えられている「性別」が「心」の動きを決めるといった価値観はあくまで欧米的ものの見方だ。逆なのだ。


たとえば20年前に主流だった「ハトシェプストは女性だったので平和主義だった」という思考は性別二元論による欧米の見方だ。


先に述べたようにイスラームは「タウヒード」、「一化論」だ。二元論を極力廃するものの見方をする。


「ハトシェプストは平和主義でいこうと思ったから平和主義だった」。


そこには「男性」も「女性」もない。
あるのはハトシェプストという人間のあり方、だ。つまり心の動きだ。


その「心」、イスラームでは5つに別れる。



純粋に学問系でたどり着いた方々へ…。
「これでいいのか?みたいな部分もあるので鵜呑みにしないで検証をお願いします。
イスラームでは「うのみ」はNGです。
信じることとうのみは別物です。(ということをタウヒード学入門に書いていたような…)


■1.ルーフ(精霊、霊魂)

الروح
イスラームで重要視されるのは「ルーフ(精霊、霊魂)」という心だ。
精霊とは訳してしまうと…別世界の話になって学問的でないとされるが、…これはイスラームでは重要な概念である。


基本的に「ルーフ(精霊、霊魂)」同士でコミュニケーションがとれれば人間関係の問題はおきないそうだ。(伝聞)
「心が通じる/通じない」というときに使う「心」が「ルーフ(精霊、霊魂)」になる。


天使までは「ルーフ(精霊、霊魂)」のみで会話ができる。だが人間はできない。
それが「人間」のややこしさだそうだ。


個人的には「オーラの性」としているものはこの「ルーフ(精霊、霊魂)」から発するもの?と思ったりするのだが、現時点では「?」マークである。



なぜかというと「ルーフ(精霊、霊魂)そのものに性別があるのか?」という命題が出てくる。


さくっとつかんだ直感は「性別がないかも」と考えている。
という根拠は「アッラーに性別がない」「天使に性別がない」からである。


第112章純正章 al-Ikhla:s 1-4
http://www2.dokidoki.ne.jp/islam/quran/quran112.htm



第43章金の装飾章 az-Zuhruf 1-23
http://www2.dokidoki.ne.jp/islam/quran/quran043-1.htm

言え、かれはアッラー、唯一なる御方であられる。アッラーは、自存され、御産みなさらないし、御産れになられたのではない、かれに比べ得る、何ものもない。」

43-15.それなのにかれら(多神教徒)は、かれのしもべ(天使)を、(アッラーの娘などと称して)かれの分身としている。本当に人間は、恩を忘れる。

43-16.それともあなたがたはかれが創られたものの中から(天使を)娘として選び、あなたがたは男児だけ授かるとでも言うのか。(いやそうではない。)


43-19.(それでも)慈悲深き方のしもべである天使たちを、女性とするのか。これらの(天使)の創造を証言できるのか。かれらの証言はL録され、(審判の日に)糾問されよう。


ということでルーフに性別があるのか?は「宿題」として保留ということで…。


オーラの性とやらに影響ありそうな…。


ちなみに今はGoogle翻訳という便利なものがある。
日本語−アラビア語ではいまだ翻訳がおかしいのであるが、「どういう文脈で使う単語か」という感覚を知るには便利。


ルーフ(精霊、霊魂)
http://translate.google.co.jp/translate_s?hl=ja&clss=&q=%D8%A7%D9%84%D8%B1%D9%88%D8%AD&tq=&sl=ja&tl=ar

1.wikipediaアラビア語バージョンでの「精神」はルーフだ。
2.死者の霊…とかスピリチュアルなものが多い。
3.実はWHOの「健康の定義」にエジプトが「スピリチュアルをいれろ」といったが欧米側のコンセンサスが得られなかった。
 この場合の「スピリチュアルの健康」とは「ルーフ」と思われる。
4.古代エジプトのバーにあたるものか?
エジプト神話 - Wikipedia
 ※バーは肉体から離れ冥界へ行く


■ナフス(心理、アイデンティティ
النفس
性同一性障害でいわれていた「心の性」とはこの「ナフス」のこと。これは肉体に付随する「心」になる。


アイデンティティをつかさどる心はこれ。


http://translate.google.co.jp/translate_s?hl=ja&clss=&q=%D9%86%D9%81%D8%B3&tq=&sl=ja&tl=ar

1.wikipediaアラビア語バージョンでの「人格」に関するものが多い。
2.教育心理学的なものが多い。
3.古代エジプトのカーにあたるもの。
エジプト神話 - Wikipedia
 ※カーは肉体に残る(ご先祖様の霊になる)。これがプラトンによって「イデア」と訳され、アイデンティティの語源となった。
同一性 - Wikipedia


「じゃあこの『心の性』でいいじゃん。」という声が聞えそうであるが、重大な問題があるのだ。
先のナフスは「肉体」に帰属しているために「人間の欲望」の基礎になるのだ。
そのためルーフの望むことと「不一致」を起こすことがある。
ナフスの求めるままに行動を起こすとルーフを傷つけて「心が病んでしまう」ことがあるのだ。
たとえば「私は女よ〜」とナフスが求めるままに性別を変えると今度はルーフがほかの人間と通わずに別の心理的な問題を起こす…という風に。そして人間関係ができずに孤立して本人も社会的廃人という不幸に…。


■アクル(理性)
العقل
感覚、感情・情動、情念いった知覚系のものとは対立する心の概念で、人間のみに本来的に備わる知的能力のこと。
これがあるから「人間」がほかの動物との差別化を図れる。
論理的、推論的、合理的精神などなど。。。

http://translate.google.co.jp/translate_s?hl=ja&clss=&q=%D8%B9%D9%82%D9%84&tq=&sl=ja&tl=ar

1.wikipediaアラビア語バージョンでの哲学に関する「心」はこれである。
2.「健全な精神は健全な肉体に宿る」はこの「理性」のことである。
3.精神神経医学系の「精神」はこの理性である。「精神を病む」とは理性が働かなくなること、決して人間性そのものが破壊されたわけではない。精神科の治療とは「理性が健康的に働くようにすること」である。

精神疾患(アクルの病)
اضطراب نفسي - ويكيبيديا، الموسوعة الحرة

○精神医学(ナフスの医学)
http://www.syrianmeds.net/psychiatry-f50.html

心理的混乱はナフスになる…。理性が働かなくてナフスも混乱するということか…。


■カルブ(感情)
القلب
主に知覚系に依存する心の働き。アクルの対立語。感覚、感情・情動、情念。
母の心とか愛情、といった心はこれになる。
また別の意味で「心臓」「中心」という意味もある。
しかしバカにしてはいけない。
人の行動における「動機」をつかさどるから…。
カルブの働きはナフスを刺激して問題行動!というのはよくある。
それをアクルで判断してルーフを守るのが正常な心の動きらしいが…。

まさに心臓部だし中心…。

http://translate.google.co.jp/translate_s?hl=ja&clss=&q=%D9%82%D9%84%D8%A8&tq=&sl=ja&tl=ar

1.心臓部、中心、そして母の心。

http://jp.fgulen.com/index.php?option=com_content&task=view&id=116&Itemid=16&mosmsg=%E3%81%94%E5%8D%94%E5%8A%9B%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%8C%E3%81%A8%E3%81%86%E3%81%94%E3%81%96%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%21


■シッル(秘奥)
السّر
深層心理とか内心、秘め事、心の中、内心、心の奥とか…。

検索すると「秘密」や「秘訣」もあり。
http://translate.google.co.jp/translate_s?hl=ja&clss=&q=%D8%B3%D8%B1&tq=&sl=ja&tl=ar


この5つの要素で人間の心を構成しているので、実際の人間の行動心理はややこしくなる、ということだ。
まずルーフをカルブが覆っている。その周囲をアクル、ナフス、シッルが相互に関係しながら、その人間のあり方を決定している。

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■で、じゃあ具体的には?

「私は性別を変更したいんです…」といわれたとする。
じゃあ、その人の「本当の性別は?」と考える前に、何がその人にそういわせているかを判断しないといけないのだ。


「性別を変更したい本当の【動機】は何か…」=>カルブ
「他の精神疾患の影響はないか…【理性は働くか】」=>アクル
「その人の【目的・欲】はなんだ?」=>ナフス
「何か隠していない?」=シッル
「話していて、きちんと【心】が通い合うか?」=>ルーフ、これが一番重要。たぶん9割。


人間として問題がないかどうかが、重要。


このすべてのバランスがとれていないと「性同一性障害」かどうか「性別越境者」か以前の問題で「性別変更」は非常に危険だ。
特にルーフが通わない状態であると「人間の中でやっていけない」からいずれ問題を起こす。


ルーフが通わない状態を判断するのは素人でも簡単だ。交流があったときに「搾取されるぐらいの徒労感」を感じた場合はその人のルーフが閉じている。要はルーフは循環していないといけないものなので、閉じた状態で相手から奪おうとしているから奪われたほうが「徒労感」として感じるのだ。センシティブな人は「警戒心」を感じるだろう。


ルーフが通っている状態だとどんなに難しい問題がそこにあったとしても、「疲労感」を感じないのだ。
※行き過ぎてナチュラルハイになるセンシティブな人もいますが…。
 そういうときは暗い部屋でも私はまぶしく感じる。

そこをクリアできてこその「性の自認の問題だ」。


この考え方は本人を守り、その周囲の人間を守る。


実はそのしくみはすでに性同一性障害の診断のガイドラインに用意されている。
アクルのチェックは除外診断に当たるし、動機、目的のチェックもそれにあたる。
すべてすでにやられているものなんだよな…。
一番重要なのは精神科医との信頼関係、これは何かというと「ルーフ」の通い合いだ。


最後に「なんでエジプトくんだりしてそんなあやしい話を?」
いえいえ、あやしくないんです。


実はこれ、「法学の勉強の一部」。


「え゛、法学ううううううううううううう?????」と思うかもしれない。


イスラーム法学には「法律の作り方」も入っているのだ。


法律をつくるためには「人間」とは何かを理解しないといけない。


上記はその「一部」です…。


ということでぶっとばしたのでしばらく日記分休憩します…。
よい休暇を!