日本人男性の魅力〜永遠の美少年系中年男子

◆「いい男」の定義
職場でPM(プロジェクトマネージャ)の色気にあてられて困っていた。いや、困ったというよりはおかげさまで大変な修羅場のなかだったが、健康をくずすことなく楽しく仕事ができた。あれ?

 昭和の慣習にはよく「女性がいると職場の癒しになる」という理由で採用を決める…というものがあったが、なるほどそれは「いい男」でもいける。というか、おそらくギリシャや日本の歴史をひもとくまでもなく、それこそが人間の中にある普遍的な感情であると私は考えている。

 ところで、この「いい男」というやつなのだが、第三者と世界観を一致させるための「定義」が非常に難しい。SE(システムエンジニア)のコミュニケーション能力の重要性を語るときにネタとして最適とされるのがこの「いい男」定義の問題である。事例としては父と娘で娘の結婚相手について話しているときに、父は「石原軍団系」でイメージし、娘は「ジャニーズ系」でイメージするため、とんでもないギャップが発生する、というオチになる。

 私はゲイや同性愛者ではないのだが、「いい男」レーダーが反応することが多い。くだんのPM氏はその「レーダー」にひっかかりまくっていたのだが、実はこの「いい男」という変数は「石原軍団系」や「ジャニーズ系」に代表されるように多種多様であり、ひとつの定義ではない。ゆえに私のレーダーにはどちらもひっかかる。多種多様の閾値が存在するからである。にもかかわらず私は「いい男」の一言でひとくくりにしてしまう傾向があるので、なかなか伊東聰にとってのいい男が他の第三者に伝わることが少ない。

 私のもつ「いい男」が他人に共有できるかどうか。そこまで言語化できるかどうか。形のみえにくいものを語ることにより、共有していくプロセスが得意かどうか。それがSEの実務能力を左右する。

 「共感」に結びつかられれば一番話は早い。トラブルも少ない。しかし、実は「いい男」は共感にむすびつけるのが難しい。非常に個体差が大きく、属人的でなかなか共通項を抽出することができないのだ。あえていうのであれば「標準より『異端』であること」。イケメンのジャニーズ系を集めてしまうとジャニーズ系ブランドで似通ってしまい、個々の魅力がなくなってしまう。しかしちょっと異端なやつがそこにはいるとその男が「いい男」にみえる。異質な遺伝子を取り込むことで生存競争を勝ち取った人類の本能かもしれない。ゆえにミスコンテストは多くあれど、イケメンのコンテストはほとんど存在しない。

しかし共感にたどりつかないまでも「その人にとって『いい男』とはなにか」を共有することはできる。

プロジェクトが終わり、エジプトにいてちょっとそんなことを考えた。

今回から何回かそんな話をかいてみたいと思う。

◆永遠の美少年系男子
実はくだんのPM氏に魅力を感じていたのは、私だけではなかった。チームにいた若手男子が彼に興味をもった。

「PMさんって年いくつなんでしょうね。」(若手)
「私より年が上だとは思って接しているけど…。考えたことないなあ…」(伊東)
「ものすごく若くみえるんですよね。見た目が。でもPMという役割と休憩時間に社長にタメ口で話しているのを聞いていると違和感感じるんですね。どうも見た目より相当年いっているんじゃないかな、という気がするんですよ。」(若手)

数日後。

「伊東さん、PMさん、社長と同い年だった!」(若手)
「(ガタ!)」(伊東)


ベンチャーで起業したここの社長はたしかに若い。しかし私より3〜5歳は年上だと昔聞いたことがあった。彼とPM氏が同い年であれば、私は37歳。いくつよ?


永遠の美少年系男子また一人発見。


魅力的な上司は部下をひきつける。
「PMさん、化粧品なにつかっているんですか?」(若手男子)
「特別なもの使っているわけではないよ。」(PM氏)


魅力的な上司には甘えは許されない。
「いや・・・年だから・・・」(PM氏)
「そこで年齢をもちださないでください!!!!」(若手男子)


PM氏の存在が私のレーダーに反応するのはなぜだ?考えてみた。


昔から仕事のつきあいがあって、そのときには別段なんとも感じなかった。素材的に端正な顔立ちではあるが、特別美形なわけではない。私の場合、素材が美形であるタイプとそうでないが魅力的なタイプは別の閾値で反応する。素材が美形である場合は即座に「美少年だ!と私は感じている」と自覚できる。そうでないタイプは「色気に当てられる」と感じる。おそらくそれはプロジェクトで寝食をともにする??=つまり徹夜作業その他によって「発見」されてきている彼の人となりだろう。


「色気に当てられる」系のレーダーは感度が高すぎて、いろいろな人をひっかける。個人的には「いい男、いい女がいっぱい」と感じて楽しいが、そのレーダーでひっかけた「いい男」は人にとっては「?」になる可能性が高い。


しかし「色気に当てられる」系の共通するその感覚は「なにか覚えがあるぞ」・・・。


彼をそっと観察してみる。まず全体的な雰囲気。
骨盤が小さい「柳腰」のスレンダーな体型。
これは美少年やニューハーフの魅力として重要なところだ。


身長165〜170台の小柄で華奢な体型。
日本人男性の「かわいい」系を維持するためには女性との体格差がありすぎてはいけない。


白くてきめの細かい肌。
色の白いのは七難かくす、は日本人男性には必須。


香水の使い方がうまいようで、そばを通るだけでふっと心つかむような薔薇の香り???
香りは盲点だった。たぶん私が知る人でも香使いは2名しか知らない。


徹夜作業で無精ひげ生やしても体質上生えそろうほど濃くない。
それも若く見える理由かもしれない。


誰に似ているか。考えてみた。
世界観のせまい私の知識のなかでうかんだのは
アメリカの俳優、エドワード・ファーロング
ターミネーター2のジョン・コナー役といえば美少年好きにはピン!とくるだろう。
彼を黒髪、こげ茶色の目にしてそのまま時をとめた状態にするとPM氏になる。
PM氏にそれをいったら即座に「否定」するだろうけど。

★在りし日のジョン・コナー役のエドワード・ファーロング
http://www.houseofdiabolique.com/hall/eddie/eddie.html

★PM氏こっちが近いかな?
Ben Templesmith Talks Horror 101 - Bloody Disgusting


エドワード・ファーロング
エドワード・ファーロング - Wikipedia
エドワード・ファーロング自身にネイティブ・アメリカン、つまりモンゴロイドの血は入っているみたい。私のレーダーは東洋人の血もはいっていないといくらイケメンでも反応しない…。


★ジョン・コナー、超太る
※「美少年の劣化問題(苦笑)」ブログに引用している方が多いみたい
http://horo346.blog75.fc2.com/blog-entry-442.html

 実はこれは「伝統的日本人な感覚の『いい男』」、美少年。
しかもいわゆる平安時代の伝統の稚児系の「いい男」ではなく、江戸時代元禄の陰間系の「いい男」だろう。同じ東洋人でも兵役のある韓国などではまず見つかりにくいタイプだ。


 海外にでると「物足りない」と感じるものがいくつかあるが、そのひとつはPM氏のような「美少年系」男子が少ないことだった。


 しっかり探すといるにはいるのだが、旬が短いために絶対数が少なくなる。


 欧米・中東系の美少年は若いころには美少年でもエドワード・ファーロングのように30歳をすぎて中年になると体格のよい樽親父になってしまうという「悲しい」現実がある。樽親父にならなかったとしても老化がはやく年齢が肌などの容姿にでてしまう。


 アブダビでの乗り換えのときにエジプト人家族のなかに9歳ぐらいのとびきりの美少女を発見した。ニカーブで顔を隠してはいるがその母にはその美少女の面影はない。


「これは親父さんが飛びきり美形に違いない。」


わくわくしながらさがすといた、親父さん。
エドワード・ファーロングwikiの写真そっくりの親父さん。
たしかに美少女の顔に影響を与えたそのそっくりな顔はたしかに美形ではあるが、首から上はその美少女の面影を残しつつ、残念ながらボンレスハムな毛むくじゃらの腕が象徴するように「劣化」していた。


…うーむ…。もったいないというか、厳しい…。


 日本人男性の場合、「永遠の美少年」とはいいすぎだが、うまくケアすれば15歳〜50歳すぎても「美少年」でいられることが多い。
美少年の「旬」が長いのだ。
もちろんそのことで「バケモノ扱い」されてしまう、職種によっては出世競争で不利になる、差別的扱いをうける、最悪の場合はセクハラなどの性的被害の犠牲者になりやすい、などのデメリットは存在するにしても、美少年の旬が長いということは日本人男性の魅力のひとつではないか、と私は思っている。


◆「弟力」と「姫の国の男」
 国際的に「日本人男性」には魅力がないとよくいわれる。日本人男性にイケメンはいないといわれる。日本サッカーの「なでしこジャパン」の勝利を素直に喜べずに日本人男性の脆弱性のあらわれとして批判する、また日本人男性に魅力がない、または自尊心が落ちている問題がある。同じアジア人でも近年の韓流ブームででてくる韓国のイケメンたちにも劣るとされる。そのやっかみや危機感が外国人排斥運動の根にあるといううがった観点もでてくるほどである。彼らがネットその他で指摘するように日本人男性は本当に「ダメ」になったのだろうか。ここだけ国粋主義になるわけではない。が、私は「無理にグローバルスタンダードの『いい男』にあわせようとする」ことに日本社会の大きな病理を感じている。


 もともと日本人男性は容姿の似た大陸の男性とも違い、「性差が少ないこと」を魅力として遺伝子的に淘汰されてきた。日本食に代表される食事さえも他の宗教のルールよりかなり厳格に適用され「男性化」をおさえこむような内容になっている。源氏物語での髭黒大将の扱い、あしたのジョー力石徹を髣髴させる「大柄、猫背、ぎょろ目、濃い髭」の大江匡衡が「醜男」としてかかれるなど、西洋的なひげの濃いごつい男が醜男として扱われた歴史的経緯がある。


 醜男と認定されれば将来性のない「口減らし」対象として仏門にいれられ、結婚できない子供もつくれないなどシステム的にも淘汰されている。一方で「女性とみまちがえるような少年」は大事に育てられ、出世もし、結婚もする。だから美しい稚児をもてあそぶ僧侶は一部例外をのぞいて醜男でねたみとそねみで性格がゆがんでいる、とされる。豊臣秀吉が今川家でいじめにあい、一方で織田信長の登用を命の恩人のように喜ぶ理由、それは「容姿」による差別的処遇が相当厳しかったことを意味している。信長の「形にとらわれない人材採用」がなければ豊臣秀吉潜在的才能を発揮することができず、一醜男として埋もれていただろう。それは庶民の生活でも例外ではなかった。夜這いというシステムも含めてイケメンでないと結婚できず醜男はセックスどころか住居にさえ苦労する。そんな時代が20世紀にもまだ残っていたのである。


「姫の国の男」と私は考えている。もともと日本人男性は卑弥呼以来の伝統にみるように、女性に仕えるように育てられている。女性によって育てられるようになっている。表向き男性優位にみえても実は女性の手のひらで踊っている。その踊り上手な男が社会で成功する。日本で「おふくろ様」神話が強いのはその伝統と無縁ではない。そしてその伝統は銀行の融資時に男性本人の能力ではなく、その妻の能力を最大に評価するという慣習にもはっきりでている。そして地位の高い「いい女」と結婚することが男のステータスをあげる。そう考えられている。


 また、別の意味でいうと「弟力」、「弟の文化」でもある。「かわいい」というのはいいかえれば「弟力」なのだ。日本社会ではトップダウンの父権的リーダーシップの持ち主は成功しない。敵を多くつくりたたきつぶされる。むしろ「周りの人の力を借りて育っていくタイプ」、ボトムアップ、つまり弟タイプの人が成功する。若手の社長というのが近年日本でもでてきているが、そのほとんどが影で「絵」を描いている「兄さん」や「おっちゃん」がいる。逆に「兄さん」や「おっちゃん」にうまく使われることが日本的リーダーシップの基本になる。育てられ上手でなければ出世しない。昨今の日本の政治が混乱のひとつに「姫の国」での「弟力」の力やタブーにきづかずに大陸的なやり方、グローバルスタンダードなやりかたを強行して、かえって日本人の潜在的心情を害して協力が得られていない、そのようにも見える。


 こうした日本的価値観・日本的性質を理解しないで、まったく逆の性質をもった西洋式の父権的包容力やトップダウンのリーダーシップを日本人男性にもとめてしまうことによって、日本人男性の自己愛や自尊心がずだずだに引き裂かれていると感じるのだ。そして、そのことが日本の文化そのものの崩壊にもつながるのではないか、という危惧さえ感じるのだ。


 日本人男性が好きな女性もいる。彼女らの語る日本人男性の魅力で多く聞かれたのは、レディーファーストとは性質が違う「女性を立てるやさしさ」だった。「話を聞いてくれる」ということだった。また彼女らが制御できる「人形」のような存在、しかしいざというときは忍耐強くタフで持久力が強い。シャイであるのは確かなので、人間関係ができるまでが困難であるが、一度できてしまうと他の国の「俺が」的男性より、「私をわかってくれる」という感覚を女性に与えやすい存在なのではないか?「姫につかえる男」の特技である。つまりそういうのは感情的にアグレッシブな「俺にしたがえ、俺についてこい」タイプではない。だが、自尊心の傷ついた日本人男性は「支配欲、優位性を回復すれば自尊心をとりもどせる」と勘違いしている。


 「姫の国の男」、「弟力」。日本のほかにもかつてそのような価値観をもっていた国があった。それが古代エジプト


 私が古代エジプトが好きなのはそこにあったのだ。そしてくだんのPM氏のなかに私がみたものは「トトメス3世」。


 ルクソール博物館にある「少女のような」端正な彫刻ゆえに、一部の人には美形ファラオとして認定されているあのファラオ。


 FTMファラオ、ハトシェプストに育てられエジプトの国土を歴史上最大に育て上げ、「エジプトのナポレオン」と称されながら、どこか少年的女性的魅力のあるファラオ。


 彼を知った17歳より20年ずっとネタを推敲して考えてきた。


 「美少年系」PM氏とプロジェクトをともにしたことでトトメス3世の物語を書いてみたくなった。

<おわり>